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補説§14

 §14.1 『基礎日本語文法』の形式名詞 §14.2 「の」形式名詞説

§14.1 『基礎日本語文法』の形式名詞

益岡・田窪『基礎日本語文法』(くろしお出版 1992)の形式名詞のところを、例文そ の他を省略して紹介します。  「文法概説」本文よりもずっと多くの形式名詞を扱っています。  形式名詞 1 名詞の性質を持ちながら意味的に希薄で、修飾要素なしでは使えない名詞を「形式  名詞」と呼ぶ。   形式名詞は、概念や事物を指し示す働きよりも、文の組み立てにおける働きの方が  重要であり、補足節、副詞相当句、副詞節を作ったり、判定詞と結合して助動詞を作  ったりする。 2 補足節を作る形式名詞には、「こと」、「の」、「ところ」がある。 3 副詞相当句、副詞節を作るものには、次のようなものがある。  ◆時:時(に)、おり(に)、あいだ(に)、うち(に)、後(で/に)、前(に)、最中(に)、     さい(に)、場合(に)、たび(に)   ◆原因・理由:ため(に)、おかげ(で)、せい(で)、あまり  ◆様態:とおり(に)、よう(に)、かわり(に)、ほか(に)、ついで(に)、まま(で)  ◆その他:一方(で)、反面、限り、くせ(に)   <注> 類似表現として、「以前、以後、ほど、くらい」等がある。これらは接尾辞的     な表現であり、形式名詞とは異なり、「それ以前、戦争以後」のように「の」を     伴わないで直接名詞に接続する。 4 判定詞と結合して助動詞になるものには、「はず、の、わけ、もの、つもり、こと、  よう」がある。 5 「ところ」には、「名詞+「の」+「ところ」」という形で、場所でない名詞を場所名詞  にしたり、全体の中の位置を示す用法がある。   「こと」には、具体的な人やものを表す名詞について、「名詞に関する事柄」、「名詞  の属性」等の意味を持つ、抽象的な名詞を作る用法がある。                                 (p.36-37)     

§14.2 「の」形式名詞説

「の」を形式名詞とする説の紹介です。まず、上でとりあげた『基礎日本語文法』から
A益岡・田窪『基礎日本語文法 改訂版』(1992)
 p.36  4節 形式名詞  1 名詞の性質を持ちながら意味的に希薄で、修飾要素なしでは使えない形式を 「形式名詞」と呼ぶ。(中略)  2 補足節を作る形式名詞には、「こと」、「の」、「ところ」がある。
B 名柄監修・井口厚夫著『日本語文法整理読本』(1994)
 p.33  「の」の類別:「それは私の本です」・・・格助詞         「それは私のです」・・・準体助詞         「もっと大きいのはありませんか」・・・形式名詞         「行くの行かないのと大騒ぎする」・・・並列助詞  *準体助詞の「の」は形式名詞と分類されることもあります。
C『新版日本語教育事典』(2005)
 p.92   また、「赤いのを下さい」の「の」のようなものは、“準体助詞”と呼ばれること もあるが、むしろ「こと」などと同じく、形式名詞と考えるべきであろう。(「助詞」 項目執筆 杉本武)  p.179   述語を補うはたらきをする節を補足節というが、そのなかには「こと」「の」「と ころ」といった形式名詞を伴うもの(名詞節)がある。(「コト・ノ・トコロ 名詞節  項目執筆 阿部忍) ▽『現代日本語文法概説』では益岡・田窪にしたがって形式名詞としていますが、「名  詞ではないけれど形式名詞に入れておく」という苦しいいいわけをしています。
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