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補説§18

 §18.1 副助詞の範囲  §18.2 文型辞典より「ナンカ・ナンテ」  

§18.1 副助詞の範囲

 「副助詞」あるいは「とりたて詞」の範囲は研究者によって違います。 寺村『日本語のシンタクスと意味掘戮粒届 は、も、こそ、さえ、まで、でも、だって、しか、だけ、ばかり、など 益岡・田窪『基礎日本語文法』 は、も、さえ、でも、すら、だって、まで、だけ、ばかり、のみ、しか、 こそ、など、なんか、なんて、くらい 『例解新国語辞典』の副助詞(上の益岡・田窪のもの以外で) か、かも、きり、しも、ずつ、だの、とか、なら、ほか、ほど、ったら、 ってば、どころか 沼田『セルフマスターシリーズ』の基本的用法 も(同質・累加、意外性、柔らげ)、まで(意外性)、さえ(意外性、十分条件)   だけ(限定)、ばかり(限定)、しか(限定)、こそ(特立)、など(否定的特立、   柔らげ)、くらい(最低限)、でも(選択的例示) その他のとりたて詞 は、が、だって 高橋太郎のテキストも含めて、用法解説を比較してみます。        高橋太郎      益岡・田窪     沼田     しか    限定 タ゛ケシカ   限定 否定の強調    限定            スルシカナイ      だけ    限定        限定        限定        数量の限定        相当する程度        理由 タ゛ケニ  ばかり   だいたいの量    限定        限定        少ない評価     否定的価値判断        同じものの集まり  概数        限定 ハ゛カリテ゛ナク  くらい   大体の数量位置   最低限       最低限        低い評価      概数        限定 おしはかり        量・程度の基準        最高 ..モノハナイ  ほど    (なし)       概数  など    代表例       例示        否定的特立        否定的評価     否定の強調     やわらげ   なんて  否定的評価      口語的  でも   極端な例 他と同様  それ以外の存在   選択的例示       Q+ 全部       意外性       軽い例示        例示    (寺村 提案・譲歩)  まで   極端例 範囲の広さ  それ以外の存在   意外性              @口語的                 すら;文 だって;口  さえ   極端例 期待以上   それ以外の存在   意外性       十分条件 サエスレハ゛    意外性      十分条件                   十分条件  こそ   強調  述語不可   強調 特に取立   特立       逆接節 限定  も  極端な例         同類項       同質・累加     一+も・・ない      意外性       意外性     数+ない         概数        やわらげ                  1+も・・ない  は   副詞+打ち消し     少なくとも       全員は・・ない    未満(+否定)       毎日は ▽細かいコメントはまたの機会に。

§18.2 文型辞典より「ナンカ・ナンテ」

   グループ・ジャマシィの『日本語文型辞典』(1998)から    (例文などかなり省略)  よくできている項目だと思います。「概説」本文ではまじめに扱っていないので。 【なんか】 1なんか<物事>  「なにか」のくだけた言い方 話しことば  aなんか    なんか食べるものない?    なんか買ってやろう   それとはっきり指し示すことのできない物事を表す  bなんか<様子>    彼女と話すと、なんかほっとした気持ちになる    今日はなんか妙に静かだ    あの人、なんか変だと思いませんか    なんか不思議だなあ。  「なぜかわからないが」「なんとなく」といった意を表す  c…かなんか [N/A/V かなんか]    果物かなんかを持っていく    映画かなんか行かない?     試験が近いかなんかで忙しそうだ  dNやなんか    出張やなんかで旅行をするとき、    チョコレートやなんかを食べて、   そのものやそれに類したものを表す 2なんか  aNなんか    お酒はワインなんか好きで、    食料品なんかは近くの店で買う    山本や鈴木なんかは反対らしい   いろいろある中から主なものを取りあげて例として示す   他にも似たものがあるという含みがある。   「など」のくだけた言い方 話しことば  bV-たりなんかして    本を読んだりなんかして過ごす    ひとりで笑ったりなんかして、どうしたの?    いろいろあることの中から主なものを取りあげて例として示す   他にも似たことをするという含みがある。(▽初めの例だけ!)  cなんか…ない    お金がないから、旅行なんかめったにできない。    あんな男となんか口もききたくない。    そんな馬鹿げたことなんか考えたこともない。    こんな汚い部屋になんか一日だって泊まりたくない。    家の中で本を読んでなんかいないで、散歩しようよ。    あんな映画ちっとも面白くなんかないよ。   名詞や動詞、名詞+助詞などの様々な成分につき、その後に否定を表す表   現を従える。そこで示された事柄に対する否定を表すが、それと同時に   「なんか」によってとりたてた物事に対する軽蔑の気持ちや謙遜の気持ち、   あるいは意外な気持ちなどの意が込められる。「など…ない」のくだけた   言い方で話しことばに用いる。 【なんて】1    (非常に省略して引用)  「なんと」    なんて言っているんですか。  「なんというN」    あの人はなんていう人ですか。    なんていう会社にお勤めですか。    彼、なんて町に住んでいるんだっけ。  「なんというNだ」    なんてことだ。ひどい話だ。(事故のニュースを聞いて)    あなたってなんて人なの。   程度のすごさに驚いたりあきれたりした気持ちを表す   「なんということはない」    このぐらいのケガ、なんてことないさ。   「たいしたことではない」という気持ち  「なんと…のだろう」    なんてすばらしいんだろう。   感嘆の気持ちをこめて表現する 【なんて】2 1Nなんて    あなたなんて大嫌い。    そんな馬鹿げた話なんて、誰も信じませんよ。    あの人の言うことなんて、嘘に決まっています。  軽視する気持ちを伴って主題として取り立てる くだけた話しことば 2…なんて    みんなには時間を守れなんて言ったけど、そういった本人が遅刻してし    まった。    息子が大学進学は嫌だなんて言い出して困っている。    私が彼をだましたなんて言っているらしいけど、彼のほうこそ嘘をつい    ているんです。    あやまれば許してもらえるなんて甘い考えは捨てなさい。    まさか、親に頼めば借金を払ってもらえるなんて思っているんじゃない    でしょうね。  後に発言・思考の動詞や名詞  その内容を表す  意外・軽視の気持ち  「などと」のくだけた言い方 3…なんて  N/Na(だ)なんて  A/V なんて    一家そろって海外旅行だなんて、うらやましいですね。    あなたにそんなことを言うなんて、実にひどい男だ。    こんなところであなたに会うなんて、びっくりしましたよ。    こんな安い給料でまじめに働くなんてばからしい。    あんな怠け者が一生懸命働きたいなんて、嘘に決まっているでしょう。    この吹雪の中を出ていくなんて、命を捨てに行くようなものだ。  後に「うらやましい」「ひどい」などの評価を表す表現  評価の対象  意外だと驚く気持ちや軽視する気持ちを伴うことが多い
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