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42.疑 問 文

           42.1 疑問文の種類            42.2 疑問文の形式            42.3 質問でない「〜か」            42.4 疑問の焦点と前提            42.5 確認の表現             補説§42  42.1 疑問文の種類    [否定疑問文] 42.2 疑問文の形式     [疑問とイントネーション] [上昇調と丁寧体] [普通体の疑問文]     [〜のだ・〜のか] 42.3 質問でない「〜か」     [聞き手がいない場合] [聞き手がいる場合] 42.4 疑問の焦点と前提     [〜の(か)/のですか/んですか] 補説§42  §42.1「ソウデス」  ふつう「疑問文」と言っている文は、より正確には「質問文」と言うべきで しょう。疑問を持つだけでなく、それを相手に聞くのですから。それはともか くとして、疑問文は相手に対してある情報を要求するものです。これもムードの 一種と考えておきます。  まず初めに疑問文の種類と形式についての基本的なことをざっと見ます。そ のあとで、もう一度基本的な問題点に戻って考え直してみることにします。  もう一つ、疑問とは少し違いますが、相手に何らかの返答を求めるという点 で関連する「確認」の表現についてもここで考えてみます。    

42.1 疑問文の種類

   まず、疑問文の種類について。ふつう三つに分けます。  a.質問内容の正しさを問い、「はい/いいえ」で答えられる「肯否疑問    文」です。言い換えれば「Aか/Aでないか」を聞いています。  b.次に、求める情報の部分に疑問語を使う「疑問語疑問文」。その疑問    語の部分の情報を求めています。「はい/いいえ」は不必要です。  c.最後に、質問の中に二つ以上の選択肢を含み、聞き手にその中の一つ    を選ばせる形式の「選択疑問文」。「Aか/Bか(/Cか・・・)」です。     これも「はい/いいえ」は要りません。     1 あした学校へ行きますか。(はい、行きます)     2 あしたどこへ行きますか。(学校へ行きます)     3 あした学校へ行きますか、会社へ行きますか。(学校へ行きます)  この分類については、特にわかりにくい点はないでしょう。ただ、選択疑問 文の「Bか」が「Aでないか」の場合は、結局肯否疑問文と同じことになりま す。答えの文で「はい/いいえ」を言わない点が違いますが。     4 あした学校へ行きますか、行きませんか。(行きます)  また、疑問語疑問文で「どちら」を使うものは、選択疑問文と近い場合があ ります。次の文は、上の3とほぼ同じでしょう。     5 あした学校と会社のどちらへ行きますか。(学校へ行きます)  しかし、同じ「どちら」を使う文型でも、次のような「比較」の場合はやは り違うものです。     6 学校と会社とでは、どちらが好きですか。(学校のほうが好きで       す)  比較の場合は、どちらか一つという「選択」のほかに、どちらがより好きか という「程度」が質問の内容になっているからです。  なお、疑問語疑問文の場合、疑問語が複数あってもかまいません。     7 あなたは、いつ、どこで生まれましたか。

[否定疑問文] 

     このほかに、肯否疑問文の一つで、質問自体が否定文になり、答えの「はい /いいえ」の使い方に独特の難しさがある「否定疑問文」は特に注意する必要 があります。     8a 「彼は(やっぱり)来ませんでしたか。」      b 「はい、来ませんでした。」      c 「いいえ、来ました。」  一般的には、否定文を使った疑問に対して同じ否定文が答えとなる場合は 「はい」で応答し、肯定文が答えならば「いいえ」になるわけです。  英語が母語の学習者の場合、「いいえ、」と言うと、そのあと文全体を否定 文にしないと落ち着かない、ということがあるようです。しかし、中国語・インド ネシア語など、多くの言語で日本語と同様の言い方がありますから、英語 との違いを強調する必要はありません。  むしろ気を付けなければならないのは、次のような場合との使い分けです。     9a 「そこにあると思うんですが、ありませんか?」      b 「ええ、ありますよ。」      c 「いいえ、ありませんよ。」  この場合は、形は同じ否定疑問「〜ませんか」ですが、話し手の気持ちとし て「ある」ことを強く予想している点が上の例と違います。そうすると、その 予想に応じて「ある」場合には「はい」と肯定の返事になり、予想に反した場 合には「いいえ」と否定になるのです。  いわゆる「勧誘」の文の場合は、「話し手の気持ち」がもっとはっきりして います。肯定で答えることが、話し手の気持ちに添うことになります。     10a 「一緒に行かないか」      b 「うん、行くよ」      c 「いや、今日は行かない」  「〜ないか」という否定疑問の形ですが、「勧誘」の文として肯定の返事を 期待しています。そこで、「行く」場合は「はい/うん」で、「行かない」ば あいは「いいえ/いや」などになります。

42.2 疑問文の形式

 次に、疑問文の形について考えます。本当はこちらを先に考えるべきだった かもしれませんが、いろいろと細かい問題があるので、種類のほうを先にしま した。

[疑問とイントネーション]

 一般に、疑問文を作るには、文末に「か」を付け、イントネーションを上昇 調にすればいいわけですが、どちらか一つ、と考えると、イントネーションの ほうが基本的と言えます。「か」を付けなくても文末をあげるだけで疑問の意 味を表せる場合が多く、そもそも述語以外のさまざまな形式が、上昇調のイン トネーションを加えるだけで疑問の意味になりうるからです。      そこにありますか。      そこにあります? そこ? こっち?      え? もっとゆっくり?  また、あとで見るように、「か」を付けてもイントネーションを下降調にす ると、疑問(質問)以外の意味合いになってしまうことが多いのです。      なるほど、そうですか。↓   もう一つ注意しておかなければならないのは、疑問語疑問文の場合です。疑 問語の存在は、疑問文の要件の一つとなるので、他の疑問文とは違った点が あります。      それはいつだ?       cf. ×それは明日だ?  上昇調でも、下降調でも、疑問文として機能します。

[上昇調と丁寧体]

 上昇調だけでは疑問文にできない場合があります。「です」は動詞述語より 「断定」の気持ちが強いためか、「か」を付けないと不自然です。     ×これはあなたの本です? 「です」がなければ、上昇調にして、疑問を表せます。 これはあなたの本? 丁寧さはもちろん下がります。ナ形容詞も同じです。     ?あした、ひまです? 言えそうですが、安定しません。これも、「です」がなければ言えます。      あした、ひま?  イ形容詞の場合は、「です」を取ると普通体になってしまいます。     ?試験は難しいです? 試験は難しい?  動詞文の場合も、学習者にはあまり勧められない言い方ですが、いちおう言 えます。      あした、行きます?      この前の会議、出席しました? 「−ます」の場合、「−masu」の「u」が聞こえないのがふつうです(母 音の無声化と言います)が、この形の疑問文でははっきり「す」と発音します。 そうしないと上昇調にできませんから。  疑問語を使った疑問文の場合は、不自然さがいくらか減少します。     ×議長はあの人です?      議長はどの人です?     ?明日は暇です?      いつが暇です?     ?これはおいしいです?      どれがおいしいです?      映画へ行きます?      どこへ行きます?

[普通体の疑問文]

 以上は丁寧体の場合でしたが、普通体はまた別の特徴があります。  まず、「か」を付けることが問題になります。      そこにあるか?      そこにあるかい?      そこにある?     ?どこにあるか? どこにある?  まず、動詞文の場合ですが、「か」を付けて上昇調にすると、かなり直接的 な質問調になります。男性の、目上から目下に対する言い方です。兄弟で、兄 から弟へは使えますが、その逆はよくないでしょう。  「〜かい」と「い」を付けて親しげな調子にするか、より一般的には「か」 を付けずに上昇調だけにしたほうがいいのです。女性の言い方としては、上昇 調だけの形のみです。  したがって、日本語学習者が普通体の疑問文を作ろうとして、たんに「しま すか」を「するか」で置き換えてしまうと、意図していない語感を相手に感じ させてしまうことになります。  さらに、疑問語疑問文の場合に「か」を付けると、上の例でわかるようにか なり不自然です。 イ形容詞の場合は、基本的には動詞と同じです。 暑いか?      暑いかい?      暑い?     ×どのぐらい暑いか?      どのぐらい暑い?   ナ形容詞・名詞文の場合は「だ」を省略することが必要です。      しばらく。元気か? (×元気だか?)      元気かい?      元気? (×元気だ?)      君は留学生か(い)?      君は留学生?  (×留学生だ?)     ×君は誰か?  疑問語疑問文の場合は、「〜だ?」の形が使えます。      お前は誰だ?      ここはどこだ?  ただし、丁寧さが揃っていないとだめですが。     ×あなたはどなただ?

[〜のだ・〜のか]

 疑問文では、「40. その他のムード」でとりあげた「〜のだ」の形がよく使 われます。その機能については、あとで「42.4 疑問文の焦点」のところで考 えることにして、ここではどんな形がありうるかという話だけをしておきます。   ここにあるのですか/あるのか/あるの?     ×ここにあるのです/あるのだ?      大きいのですか?     ×大きいのです? 病気なのですか/なのか/なの?     ×病気なのです?  この「〜なの?」という形は話しことばでよく使われます。      (電話で)あなた?あなたなの?  一般の疑問文で、「〜のです/のだ?」という形は成立しません。しかし、 疑問語疑問文は言えそうです。話しことばの「〜んです」の形にします。      どこにあるんです/あるんだ?     ?どのぐらい大きいんです/大きいんだ?        いったいどんな病気なんです/なんだ? 「〜んですか」は「×〜んか」とは言えません。               

42.3 質問でない「〜か」

    さて、以上が疑問文の種類と形についての説明ですが、これから少し問題点 を考えてみたいと思います。  問題の第一は、疑問文とは何か、ということです。言い換えると、「疑問」 ということの意味と、それを表わす形式との関連を調べることです。  疑問文とは聞き手に答えを要求する文、つまり「質問」の文であるのがふつ うですが、そうでないものもあります。相手に対する「質問」ではなく、単に 「疑問」を提示しているだけで答えを求めていないもの、また、そもそも疑問 を持っているわけではないのに、形式的には疑問文の形をとっているもの、が あります。それらをまず見てみましょう。一般的には「か」のつくものですが、 疑問語があると、すでに見たように「か」のない場合があります。

[聞き手がいない場合]

 まず、疑問文といっても、「聞き手」がいない場合があります。いわゆる自 問自答です。      (自分自身に)お前はそれでいいのか?後悔しないか? ↑      これからどうしようか。田舎にでも帰るか。↓   これは質問の相手が自分自身であるだけで、質問、つまりふつうの疑問文と 言っていいでしょう。上昇調でありうる点も、ふつうの疑問文です。形式的特 徴としては、丁寧体ではあり得ないということです。下降調でいうと、質問と いうより自分自身への提案という感じもします。  はっきり質問しているわけではなく、迷いを表わす場合。考慮中です。      誰に相談しようかなあ。山田がいいかなあ。      さて、どっちにしようかな。  この「〜かな(あ)」という形が特徴的です。上昇調にはなりません。  この言い方は聞き手がいる場合でも使われます。聞き手が答えてくれること を期待はしていますが、質問とは言えません。質問なら、そのあとに、      山田がいいかなあ。どう思う? とでも付けるところです。はっきり上昇調にして、      これでいいかな? と聞けば、質問です。  迷ってはいますが、一応自分の気持ちに決着をつける場合。      ま、こんなもんでいいか。      しょうがない。あきらめることにするか。  もっとはっきり決定を表わす場合。      よし、今日はこの服にするか。  答えを見つけて納得する場合。なぜ疑問の形になるのかわかりませんが。      ああそうか。そうだったのか。      なんだ、これでいいのか。  疑問というよりは、発見の驚き・感嘆を表しているようです。「〜のか」の 形が使われることが多く、上の例でも、     ?なんだ、これでいいか。 とすると変です。  疑問文の形でなくても、同じような意味になります。ここでも「〜のだ」が 使われています。「そうか」を「そうだ」とすると、また違ってきますが。      ああ、そうか。そうだったんだ。      なんだ、これでいいんだ。  もちろん、「〜だ」のほうが、はっきり言いきっています。  以上、質問でないので、みな下降調になります。

[聞き手がいる場合]

 次に、はっきり聞き手がいる場合、と言うか、聞き手がいることを考慮して 言う場合を見てみます。  反語的な言い方があります。答えを要求していません。否定を表わします。 何かしら評価に関係する表現が含まれているのが特徴です。      こんなことでいいのか。(よくない)      あのような説明で誰が納得するか。(誰も納得しない)      どうして行かなくちゃいけないんだ。(行かなくていいと思う)  納得を表すもの。      やあ、あなたでしたか。      へーえ、これがうわさの新製品ですか。  単なるあいづち。      ああ、なるほど。そうですか。  同じあいづちでも、「そうですね」とは違って、そのことを知らなかったこ とが示されます。次の例と比べてみて下さい。 ああ、なるほど。そうですね。  勧誘や推量の形に「か」が付いた場合のことは、それぞれのところで説明し ました。      そろそろ飯にしようか。      彼女は結婚するだろうか。  また、問題を提示する場合の「〜だろうか/でしょうか」についても前に触 れました。      いったい、こんなことでいいのでしょうか。  疑問ではない「〜じゃないですか」という形についてもすでに述べました。

42.4 疑問の焦点と前提

 疑問文で大事なことは、何を聞こうとしているのか、ということです。聞き 手の側からいえば、何が聞かれているのか、ということです。答えの文はそれ を正確に、むだなく答えなければいけません。 恋人はいますか? という質問に対しては、「はい、います/いいえ、いません」のどちらかで答 えれば十分ですが、 あなたはタクシーで来ましたか。 という質問に対して、     ?いいえ、来ませんでした。 という答え方は、少し変です。この質問で聞きたかったことは、「来たか/来 なかったか」ではもちろんなくて、「来た」ことを前提として(今、目の前に います!)、その手段がタクシーだったかどうかです。  では、肯定の答えならいいでしょうか。 「車で来ましたか」「はい、来ました」 これも何となく落ち着きません。      はい、車で来ました。 と、そのまま答えるか、「はい、車です」のような答え方が適当です。否定は、      いいえ、地下鉄で来ました。 のように、別の答えを言うのが自然です。  なお、今の例で、「来た」ことが文脈の中で前提になっていれば、昨日の話 でも同じです。      昨日、タクシーで来ましたか。(「昨日来た」ことは前提で)     ?いいえ、来ませんでした。     ?はい、来ました。  次の例は、文脈によって意味が違う例です。    a (最近、行ったり行かなかったりだけれど)      明日、行きますか。      ええ、行きます。/いいえ、行きません。    b (今日か明日行かなければいけないんだけど)      明日、行きますか。  ?ええ、行きます。/?いいえ、行きません。      ええ、明日行きます。/いいえ、今日行きます。  aの場合は、「行くか行かないか」、言い換えれば質問文の「行きます」と いう述語が表す事態が成立するかどうかを聞いているのに対し、bでは「行く」 事は前提になっていて、それが「明日かどうか」を聞いています。「明日」が 質問の焦点となっているので、答えの文で省略すると落ち着きません。  また、aの「明日」は「明日は」と主題化することができますが、bは「明 日は」とは言えません。「は」をつけると、それについて質問することになり、 質問の焦点にはできなくなります。

[〜の(か)/のですか/んですか]

   疑問文の焦点ということに関して大切な形式がこの「〜の(です)か」です。 疑問文が述語の表す内容が成立するかどうかの質問でなく、その焦点が他 の部分にある場合によく使われます。      あなたはタクシーで来たんですか。(焦点:タクシー)      鍵はこの引き出しにあったのか? (焦点:この引き出し)  特に、普通体では、焦点が述語以外の要素にある場合、「の」を使わないと 不自然に感じることがあります。      鍵はこの引き出しにあった(か)?      このケーキは駅前の店で買った(か)?     ?君の子どもはこっちで生まれた(か)?  文脈やイントネーションにもよりますが、「の」を使ったほうが自然でしょ う。      このケーキは駅前の店で買ったの(か)?      君の子どもはこっちで生まれたのか? もちろん、「の」を使う疑問文は、「状況説明」の場合にも使われます。      おや、風邪をひいたんですか?(マスクをしているのを見て) 「風邪をひいた」以外の所に焦点があるわけではありません。「マスクをして いる」という状況に対して説明を求めているわけです。      ご飯、食べたくないの? 行くんですか? 疑問語を使った疑問文というのは、その述語は前提になっているので、「の か」がよく使われます。      いつ始まるんですか。      どこに行くのですか。      誰がそう言ったの?  「どこに行きますか」という質問は、「どこかに行く」ことを前提にしてい ます。同様に、他の疑問語疑問文もすべて対応する「〜か」の不定語を使って 次のようにその前提を表せます。 何があるか → 何かがある      いつ始まるか → いつか始まる      誰が来るか  → 誰か来る      どの本を読むか → どれかの本を読む どうするか  → どうにかする したがって、述語の部分自体は質問の焦点からはずれ、まさに疑問語の部分 が焦点になります。そこで、「のか」が使われたほうが自然になります。

42.5 確認の表現

疑問文と近いものに確認の表現があります。疑問(質問)と確認は、返答を要 求するという点で共通します。確認の表現としてはすでに終助詞の「ね」と、 推量の「〜でしょう」、それに「〜(ん)じゃないか」の用法としてとりあげま した。ここでまとめて復習しておきます。(→「19.2.1 ネ」「38.2.3 〜ダロ ウ/デショウ?」「40.5 〜(ン)ジャナイカ」)  「ね」は大きく言って同意と確認の用法がありました。自分が思っているこ とを相手も同じように思ってほしい場合と、自分が思っていることに自信がな くて、相手に確かめる場合と。      暑いですね(え)。      これはあなたのですね?  この例は「〜でしょう?」でも言えます。「ですね」のほうがそのことに自 信を持っているようです。ただし、「でしょう」には、はっきり言わずに表現 を和らげるという効果もありますから、必ずしも確信度が低いわけでもありま せん。      これはあなたのでしょう?  「〜でしょう」の基本的用法は、推量、つまり自分も相手も確かでないこと を確信のないまま言う用法と、文末を上昇調にする確認の用法でした。  確認には二つあって、相手のほうがよく知っていそうなことの真偽を確かめ る場合と、自分が知っていることを相手も知っているかどうか確かめる場合が あります。      彼も来るでしょう? (聞き手が知っていると考えて)      この前教えたでしょう? (話し手はよく覚えている)  後の例は「〜よね」で言えますが、「〜でしょう」のほうがかえって強い感 じがします。「どうしてまちがえたの?」という非難が含まれることもありま す。      この前教えたよね?  それは、「〜よね」に主張の意味があっても、その事柄が事実であるかどう かについての主張(+確認)ですから、逆に言えば、そうでないという可能性を 残しているからです。  それに対して、この用法の「〜でしょう?」は事実については問題とせず、 それを聞き手が知っているかどうかを確かめているだけです。  「〜(ん)じゃないか」にも確認の用法がありました。      この前教えたじゃないか。 は「〜でしょう」と同じで、事実の確認ではなく、覚えているかどうかの確認 です。  さらに強い非難の気持が出ています。 これはあなたのかばんじゃありませんか? は、否定疑問文が肯定の答えを予想して、確認の意味合いを帯びています。下 降調で言うと、      これはあなたのかばんじゃありませんか。↓ あらかじめ知っている場合は詰問調、今知った場合は発見・驚きの意味合いが 生まれます。     なお、「でしょう」と「ね」がいっしょに使われた形、「〜でしょうね」は上昇調に なりません。      たぶん、これでしょうね。 「〜でしょう」は推量、「〜ね」は同意を求める用法です。   あなたもやってくれるんでしょうねえ。  こちらは推量というよりやわらげの効果です。 補説§42へ 参考文献 安達太郎1992「「傾き」を持つ疑問文−情報要求文から情報提供文へ−」『日本語教育』77 井上優・黄麗華1996「日本語と中国語の真偽疑問文」『国語学』184集 井上優・黄麗華1998「日本語と中国語の省略疑問文「αハ?」「α口尼?」」『国語学』192集 楠本徹也1994「否定疑問文とその応答に関する覚え書き」『東京外国語大学留学生日本語教育センター論集』20 小林ミナ1993「疑問文と質問に関する語用論的考察−特にそのスコープと焦点について−」『言語研究』104 三枝令子「助動詞「だ」と助詞「か」の結びつきをめぐって」 野田春美1995「ノカ?、ノ?、カ?、φ?」宮島他編『類義上』くろしお出版 牧原功「疑問表現における「の」の機能の一側面−前提との関わりを中心に−」」不明・紀要 三宅知宏1993「派生的意味について−日本語質問文の一側面−」『日本語教育』79 宮崎和人1998「否定疑問文の述語形態と機能−「(ノ)デハナカッタカ」の位置づけの検討−」『国語学』194集 由本樹子1996「Yes,No疑問文に対する応答「ええ、そうです」についての意味的分析」『言語学研究』2神田外語大学大学院 カノックワン・ラオハプラナキット「疑問文文末形式「否定辞+カ」の意味と用法」不明・紀要