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[補説§57]

§57.1 工藤真由美「ノとコト」 §57.2 疑問節の動詞文型

§57.1 工藤真由美「ノとコト」

 工藤真由美の論文から動詞の分類と動詞例を引用します。この問題に関する基本的文献です。 工藤真由美1985「ノ、コトの使い分けと動詞の種類」『国文学 解釈と鑑賞』50.3 [の] 1 感覚動詞 見る、見かける、眺める、見物する、聞く、聞こえる・・ 1 「見る、ながめる」が感情=評価を表す形容詞(副詞)や、判断=思考内容を 表す引用句と組み合わさって、全体として態度動詞化した場合、コトもとる 2 「見る、見える」で対象が目でとらえられないような心理的、抽象的なもので ある場合、「認知する、知る」という意味の認知動詞化し、コトもとる 2 動作性動詞 待つ、手伝う、送る(見送る)、追う(追いかける)、さえぎる、 会う(出あう、出くわす)、おさえる、助ける、冷やす、直す、 遅れる、止まる、やむ 動作性がうすれるとコトもとる 待つ→期待する [こと] 3 思考動詞 思う、考える、予想する、信じる、疑う、反省する、理解する 1 感情=評価を表す形容詞(副詞)や、判断=思考内容を表す引用句と組み合わ さって、全体として態度動詞化した場合、ノもとる 2 「理解する、悟る」は意味から認知動詞「知る、わかる」に近く、ノもとる 3 「信じる、疑う、反省する」は態度動詞に近く、ノもとる 4 伝達動詞 言う、話す、述べる、しゃべる、聞く、書く、読む、知らせる、 伝える、報告する、教える、主張する、発表する、教わる、伝わる 情報を与える・得るという意味は認知動詞「知る」と共通し、ノもとる 5 意志動詞 命じる、命令する、すすめる、頼む、要求する、求める、禁じる、 許す、許可する、望む、願う、祈る、決める、決心する、約束する 下線の動詞はかなりノも使われる。一定の心的態度を表し、態度動詞と共通。 意志的態度:コト(意志動詞)、感情=評価的態度:ノ/コト(態度動詞) 6 表示動詞 示す、さす、暗示する、証明する、意味する、ふれる、ほのめかす [の/こと] 7 認知動詞 発見する、認める、見落とす、感じる、知る、わかる、気づく、 確認する、確かめる、(に)注意する、覚える、思い出す、忘れる 感覚活動、思考活動、伝達活動などさまざまな活動の結果として対象を認知 1 従属節が「-スル」「-シテクル(イク)」で主体の内的状態の変化(心理的、      生理的)を表す場合はコト 2 対象が感覚的にとらえられる具体的なものである場合はノが多い 3 対象が抽象的なものであればコトが多い しかし、2 と3 は反例もある 4 ただし、「-トイウコト」はあるが、「-トイウノ」 はないようだ 5 「みつける、みいだす」は対象を発見=認知することを表すが、ノだけとる 8 態度動詞 喜ぶ、憎む、嫌う、恐れる、悲しむ、驚く、期待する、尊敬する、 感謝する、楽しむ、起こる、公開する、残念がる、気にする、 あきれる、感心する、心配する、満足する、慣れる、賛成する、 反対する、否定する、あきらめる、断る、隠す、ほめる、我慢する 対象に対する、感情=評価的な、あるいは知的なさまざまな態度を表す 9 その他 やめる、よす、避ける、防ぐ ▽最後の「その他」というのは、分類としてはいかにも問題があります。  「の」の「動作性動詞」とともに、これ以後の研究でとりあげられることになります。

§57.2 疑問節の動詞文型

疑問節をとる動詞の文型を少し細かく見てみます。  疑問節をとる文型と動詞例 [人ガ 〜カ(ドウカ)(ヲ)]   試みる、調べる、検査する、考える、研究する、数える、   知る、理解する、当てる、覚える、思い出す、忘れる、疑う [人ニ/ガ 〜カ(ドウカ)(ガ)]   わかる [人ガ 〜カ(ドウカ)(ヲ/ニ/デ)]      迷う、悩む    注意すべきかどうか 迷った/悩んだ。  心理的な動詞で原因を表す「ニ/デ」をとるもの  実際の文では省略されることが多い。 [人ガ 人ニ 〜カ(ドウカ)(ヲ)]   教える、見せる、言う、伝える、話す、相談する   聞く、質問する、尋ねる    子供に何をどうすればいいか教える    友達にこの服でいいかどうか相談した。 [人ガ 人ニ/カラ 〜カ(ドウカ)(ヲ)]   聞く、教わる、習う    先生にどうやって問題を解くかを教わった。  [人ガ 人ト 〜カ(ドウカ)(ヲ)]   議論する、話し合う、話す、相談する     妻と家の間取りをどうするか相談した。 [人ガ 〜カ(ドウカ)(ニ) ものヲ]   賭ける    5分でできるかどうか/誰がいちばん早いか(に)金を賭けた。  (類例があるかどうか、珍しい文型)  以下の動詞は主格にも疑問節をとりうる。  疑問節が二つ現れる場合と、一つは名詞句である場合がある。 [〜カ(ドウカ)ガ 〜カ(ドウカ)ニ]   因る、掛かる、従う、基づく、影響する、関係する(ニ/ト)    優勝できるかどうかは、どれだけ努力するかに掛かっている。    優勝の可否は君たちがどれだけ努力するかに掛かっている。    優勝できるかどうかは、努力の質による。 [〜カ(ドウカ)ガ 〜カ(ドウカ)ヲ]    人望があるかどうか(ということ)が会長に選ばれるかどうかを    決める/決定する。 [〜カ(ドウカ)ガ]    今日の会議で、誰が次の会長になるかが決まる。  これは自動詞で主格が疑問節 主要目次へ 「57.名詞節」へ